時代が過ぎていった。
余りにも突然の別れだった。
アレックスがトイレを済ませて、私の部屋に行ったらしいのはわかった。
でもこれが別れだとは思わなかった。
アレックスが我が家に来たのは2008年3月23日日曜日だった。
デパートの中の今はもうないペットショップで6か月になっていたアビシニアンに目がいった。
小さな子猫はいっぱいいた。
でも、こんなに大きくなっているのに、ケージの中にいる事が見ていて心が痛んだ。
この子にしようと即座に決めた。
アレックスは私たちの心の癒しになった。
毎日毎日アレックスを見るのが楽しかった。
でも、長くケージにいたせいかなかなか近寄ってくれない。
2009年5月29日金曜日に保護シェルターにいた子猫を引き取った。
名前はこめ。
毛の色が真っ白だった。
こめは甘えてくれる。
猫を抱きしめる楽しみが増えた。
不思議な事にアレックスがなついてきた。
人間にこんな風に甘えていいのだとこめから学んだようだ。
アレックスとこめ、我が家の宝になった。
こめが2021年10月30日に旅立った。
悲しみに暮れる日々が続き、アレックスも続くのではと不安が募った。
後ろ脚が悪くなり、便秘になった。
病院で見てもらい、足は治らないが痛みはないと聞いた。
便秘によい療養食のフードを紹介してもらった。
便秘も治り、ほっとした。
ベットに飛び上がれないので、娘は手作りの階段を作った。
私のベットにはもう無理だろうと諦めていた。
でも、最近、アレックスが私のベットに上がっていた。
人間のように枕をして寝ている。
私はアレックスの邪魔をしないように小さくなって寝ていた。
その日もアレックスはお昼寝だろうと思っていた。
でも、違った。
まだ、温かい。
名前を呼ぶ。
答えてくれない。
こめの時、一緒にいてあげられなかった。
見つけた時、まだ、温かいこめだったけど、硬くなりつつあった。
次からは必ず手の中で見送ると決めていた。
同じ家にいながら、たった数メートル先にいただけだったのに、アレックスを抱っこして見送れなかった。
温かいアレックス、どんなに抱っこしても、答えてはくれなかった。
お葬式を終えて、今、リビングに二つの骨壺が並ぶ。
おはようと言いながら、骨壺の入った袋を撫でる。
我が家に慰めを運んできてくれたアレックスとこめの骨壺だ。
幸せを運んできてくれた二人だった。
そして、今、保護猫だけになった。
その保護猫は、アレックスとこめにいつも癒されていた私たちは行場のない保護猫をゆずってもらって、少しでも幸せな猫になってほしいと思った存在だった。
私たちが癒されることを願って飼ったアレックスとこめ、幸せな猫にしたいと思って、譲ってもらった保護猫。
時代は過ぎた。
今、幸せにしたいと思って飼った保護猫が私たちを癒してくれている。
可愛い可愛い王子様のアレックス