夏目漱石
ずいぶん久しぶりに夏目漱石の本を図書館で借りてきた。
「京に着ける夕」という短編を読み始めると、日本語の美しさに
声を上げて読みたくなった。
「汽車は流星の疾きに、二百里の春を貫いて、行くわれを七条の
プラットフォームの上に振り落とす。」
気持ちの良い書き出しである。
夏目漱石の作品は大学時代にのめりこむように読んだ。
夏目漱石の作品に登場する主役級の人物は皆、救いを求めているのだが
その救いにたどり着けず、苦しみと悲しみに満ちた人生の中で生きている。
なぜ、救いに至れないのかと思うし、人は自分の力では自分を救いえないのに
自分の心の奥に求めて行こうとする、そんな苦しみをいつも作品から感じていた。
そんな学生時代の感想が、今の年齢でどう変わっていくのか、変わらないのか、
もう一度、夏目漱石の作品のあれこれを読んでみたいと思う。
文庫本に「漱石ホラー傑作選」というのがあった。
長編の中の一部のピックアップが多いのだが、読んでいて、
別にホラーというほどではないが、人間の心の深いところにある、解決しない
感覚というものを感じる。